2019年12月08日

Nakamichi SR-40 - STASIS ステレオレシーバー

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ナカミチ SR-40 STASIS ステレオレシーバー

1987年にリリースされたチューナー付きアンプです。オーディオマニアの友人から修理できるなら使ってほしいといただきました。

「SR-40」は、STASIS方式のパワーアンプ回路を搭載しています。
STASISは、ネルソン・パス氏が米Threshold(スレッショルド)社で技術開発した終段無帰還タイプのアンプです。増幅素子が常に最もリニアな状態で働くよう定常(STASIS)状態をキープするSTASIS回路(純A級動作)と、スピーカーへの電流供給のみを行うカレントミラーブートストラップ部で構成されているそうです。

ナカミチが1985年に特許ライセンスを受けて、翌年にパワーアンプ「PA-70/50」シリーズでまず製品化されました。当時、スレッショルド社は超高額なハイエンド製品だけをリリースしており、ミドルレンジ以下の製品群での展開をナカミチに許諾したそうです。

当時のナカミチにはプリメインアンプ製品は存在せず、STASISを搭載したステレオレシーバー製品が「SR-40(海外ではSR-4)」で、販売価格148,000円とかなりの高級機でした。下位機種に「SR-30/20」という製品もあったようです。

この「SR-40」までは国内製造でしたが、それ以降の機種は海外製造になったようで、製品品質がかなり低下したらしいです。後継機種は「TA-40/30/20」と改称されて、1990年頃までリリースされていました。

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当時、北米ではステレオレシーバーの人気がかなりあり、その市場規模も大きかったようです。「SR-40」のカタログには、「The Audiophile Receiver」、「Remote Control STASIS Receiver」などの記載があり、ハイエンド向けステレオレシーバーとしてアピールしていたようです。

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「SR-40」の外見は32年前のオーディオ製品には見えないくらい状態はいいです。元のオーナー曰く、音は出ていたが、時折ノイズも混じることがあったとのこと。
しかし、電源をいきなり入れるのは憚れるので、いったん筐体内部を開けて確認しました。

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下の基板がメインのアンプ基板で、中央にかなり大きな放熱板が載っています。
それなりに埃が積もっていましたが、電子部品が焦げていたり、焼損寸前になっているようなものは見受けられません。
終段は往年の名石、サンケン2SA1491/2SC3855が2パラ構成で載っていました。

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ほとんどディスクリート部品で構成されているので、修理はわりと容易な感じです。
しかし、銅箔スチロールコンデンサがこんなに大量に搭載されているアンプを初めてみました。スチロールコンデンサは音がいいので有名な部品なのですが、非常に熱に弱い(耐熱温度はおよそ85℃)ので、もしダメージがある部品が見つかるとたいへんなことになります。すでに部品としてはディスコンですので、デッドストックがどこかにあるかどうか、、、

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フロントパネル側にAM/FMチューナー部の基板もあるため、かなり複雑で高密度な実装です。音質向上のため、チューナー回路を外してしまうのもありかもしれません。

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電源部は大型のトロイダルトランスがあり、二本の大型電解コンデンサもすこしだけ膨らんでいますが、まだ無事な状態でした。

電源を入れてしばらく放置してみていましたが、とくに発熱したり、異常振動をしたり、まして煙を上げることもありませんでした。大きな放熱板のせいかトランジスタの温度上昇もマイルドな感じです。

気を良くして、CD入力で音楽信号をいれて、ボリュームをあげてみるとちゃんとスピーカから音が出ました。メインボリュームにはとくにガリもなく、スムーズに音量をコントロールできますが、モーターコントロールがついているためか、ボリュームノブはかなり重い質感です。

また、AM/FMチューナーのディスプレイ表示の輝度が低くなってしまって、とても見づらいことがわかりました。FMアンテナをつけると、シグナルメータも表示され、FM受信した音がちゃんと再生できました。保有している他のFM専用チューナーよりも受信感度がいいのに驚きました。

しばらく使っていると、ときどき左チャネルがでない症状がありましたが、トーンコントロールのボリュームの接触不良らしいことがわかりました。

主に、信号経路の接触不良が原因と思われますので、完全オーバーホールまでしなくても大丈夫そうです。とりあえず、怪しい箇所の接点を清掃をして使ってみています。

STASIS搭載アンプは初めて聴くのですが、ステレオレシーバーというより、高級アンプといったほうがいいくらい、素敵なサウンドを出してくれています。
とくにパワフルさはありませんが、ちょっとびっくりな美音です!

日本では人気が出なかったのは、レシーバーという製品形態が原因だったんでしょう。

ネット上での海外ユーザーの口コミでは、「SR-40(SR-4)」はSTASIS回路を搭載したパワーアンプ「PA-50(PA-5)」よりも音がいいという感想もあります。

1990年代にスレッショルドと契約面で決裂し、STASIS回路をもつ製品を販売できなくなったそうです。
本格的なセパレートアンプからは撤退したのは、STASIS搭載アンプ以上の音質が実現できなかったのかもしれません。
その後、ナカミチは自社開発のHTA(ハーモニック・タイム・アライメント)回路を搭載したレシーバーやプリメインアンプ製品をリリースするようになりましたが、どうも商業的には成功できなかったようです。

SR4_ServiceManual-1.jpeg

この「SR-40」、複雑な実装なので、完全に分解清掃するのは面倒そうです。
サービスマニュアル(英語版)がなんとか入手できたので、しっかりメンテナンスをやってみたいと思います。

参考までに、「SR-40」のスペックを!

Nakamichi SR-40 仕様
<アンプ部>
 定格出力:75W+75W(6Ω)、60W+60W(8Ω)
 全高調波歪率:0.1%以下(8Ω、定格出力、20Hz〜20kHz)
 周波数特性:5Hz〜75kHz +0 -3dB
 S/N比 (IHF A-WTD、SP out、入力ショート)
  Phono MC:73dB以上(ゲイン32dB、1W)、72dB以上(ゲイン24dB、1W)
  Phono MM:80dB以上(1W)
  CD、video、tape:105dB以上(定格出力)
 入力感度/インピーダンス
  Phono MC:60μV/100Ω(ゲイン32dB)
        160μV/100Ω(ゲイン24dB)
  Phono MM:2.5mV/47kΩ
  CD、video、tape:200mV/20kΩ
<FMチューナー部>
 実用感度:11dBf/0.97μV(75Ω)
 S/N比(85dBf入力):mono:85dB以上、stereo:80dB以上
 周波数特性:20Hz〜15kHz ±1dB 
 高調波歪率(1kHz、wide):mono:0.05%以下、stereo:0.07%以下
 実効選択度:wide:55dB以上(±400kHz)、narrow:70dB以上(±300kHz)
 ステレオセパレーション:wide:50dB以上(1kHz)
<総合>
 電源:100V、50Hz/60Hz
 消費電力:380W(最大)
 外形寸法:幅430x高さ100x奥行370mm
 重量:10.1kg
 付属:ワイアレスリモコン
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追記(2019/12/11)
ランニングテストしているところですが、左チャネルが出力されない現象がときどき発生!
トーンコントロール回路をパスしても発生しているので、トーンコントロール部の接触不良のせいだけではないようです。やはり本格的にオーバーホールしないといけないですね。
あと、ナカミチ独特のバリアブルラウドネスコントロール機能(メインボリュームの下にあるボリューム)の使い方が?
全体の音量を下げつつ中域のレベルを絞り込むことでラウドネス効果を発生させるしいのですが、音量が下がるばかりでラウドネス効果がどうも実感できていません。

追記(2020/1/15)
左チャネルが出なくなる原因は、どうも左右バランスボリュームの接触不良のようです。メインボリュームと同軸構造のMN型ボリュームはまず手に入らないので、分解掃除しか方法はなさそうです。
posted by toons at 23:56| Comment(6) | オーディオ
この記事へのコメント
はじめまして。
当時憧れていた製品でしたので、感動致しました。
次世代機は、海外で製造というお話しも、初めて知りました。
基本、ミーハーですので、カタログで喜べる以上の知識は無く、お恥ずかしいです。
紳士的な語り口で、落ち着いた心地で拝読致しました。
楽しいひと時を過ごせました、ありがとうございます。
Posted by にしやま てつし at 2021年10月24日 21:08
てつしさん
ご拝読ありがとうございます。
ナカミチファンでずっと欲しかった製品が多数ありましたが、当時は高嶺の花でした。ナカミチはスレッショルド以外にもいち早く1980年代にB&Wの総代理店をやっていたり、プライベートのコンサートホールを運営したりして、オーディオ・サウンドの本質を理解していた稀有なメーカーだと思います。企業存続できなかったのは本当に残念な限りです。
Posted by toons.t at 2021年10月25日 01:32
はじめましてです。六平太と申します。
私も持ってます。いいですよね、SR-40。
87年当時、ナカミチの営業マンの家に招かれて聞かされた1000ZXLの音に腰を抜かすほどビックリ。その時のアンプがたまたまSR-40でした。1000ZXLはさすがに無理でしたが、その時の感動が強すぎて、サンスイの707Xを友人に譲ってSR-40を速攻買いしてしまった程です。
その後、環境の変化と共になんとなくオーディオから遠ざかっていたのですが、つい最近数年振りに電源を入れてみたらガリの嵐でした。確かにうちのもトーンコントロール部の接点不良が一番ひどかったです。ガリだけでも直そうと現在入院中ですが、2ヶ月位掛かるとのこと。戻って来たらまた細々とオーディオを復活させていきたいと思っているところです。
珍しいSR-40の記事だったので、つい嬉しくなりコメントさせていただきました。
Posted by 六平太 at 2022年03月03日 17:11
六平太さん
コメントありがとうございます。
私のSR-40のほうもトーンコントロールとチャネルバランスのVRを接点洗浄したら、ノイズも出なくなって無事に動作しています。信号系の接点洗浄だけで本格メンテナンスはまだやっていませんが、そのうちチャレンジしようと思っています。
はやく修理が終わって戻ってくるのが楽しみですね。コロナの影響でオーディオに戻る方も増えているそうです。私もじっくり音楽を聴く時間が増えました。ピュアオーディオを愉しみましょう!
Posted by toons.t at 2022年03月03日 21:28
TA-20、TA-30も日本製です。バックパネル右下にMade in Japanと印字があります。
Posted by 東京タコ歯科大学 at 2024年02月08日 11:25
東京タコ歯科大学さん
情報ありがとうございます。
80年代末には海外の製造拠点ができていたようですが、アンプ製造については誤情報だったようです。
Posted by toons.t at 2024年02月08日 19:01
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