
東芝のSIENTシリーズ・DCモーター扇風機「F-DLP100(W)」
DCインバーターモーター搭載の静音を売りにした扇風機で、7年前に購入しました。SIENTシリーズはハイクラス扇風機として2011年から2016年まで販売されていたようです。
この扇風機、購入当初はDCモーターの回転音や羽の風切り音がとても静かで、その静音性能に満足していました。
首振りも上下・左右に立体的動作ができて、とても静かだったのですが、、、、
近年は騒音レベルが徐々に上がり、とくに首振り時のモーター音、角度を手動で変えた後の首振り時の異音、首ふり反転時のブーン、カタカタという異音などが気になっていました。
もうじき補修用性能部品の保有期間も終わろうとしていますし、本格的な利用シーズン前に自分自身でメンテナンスすることにしました。(2016年6月末に東芝の家電事業が中国・美的集団グループに売却されてしまい、メーカ・メンテナンスもあまり期待できそうにないので。)
この扇風機の場合、モーター部の前面カバーのネジ8本を外し、前面ネックカバーのネジ1本を外すと、モーターを支える金属プレートがみえてきます。
*2(前面カバーを止めているネジのみ外してください。金属プレートを固定しているネジ5本は外す必要はありません。もし外してネジ山を潰すと故障の原因になります。)

さらに、金属プレートの左右の奥にあるネジ2本とモーターカバーの後部下側のネジ1本を外すと、モーターカバーを外すことができます。
モーターカバー内部はすこし窮屈な設計のようで、モーターカバーの後部を持ち上げ気味にして後方へ引くと外しやすいです。
*3(モーターカバーが取り外しにくい場合、モーターカバー内部の持ち手部分に縦首振りメカが引っかかっているのが原因です。このとき、縦方向の首振り角度をすこし上向き(+20度くらい)にしておくとスムーズに外れます。)

*3(モーターカバーを外した際の内部メカの状態。縦首振りメカがこのような状態のときに分解しやすいです。組立時も同様で、このような首振り角度にしておけば、モーターカバーをセットしやすくなります。)

メインDCモーターの振動騒音を軽減するために、取り付け部はゴムで制振されていたり、モーターカバーのバックチャンバー部分には制振用ウエイトとサイレンサーまでついています。


さらに、上下首振り用、左右首振り用として完全独立したDCモータで駆動され、首振り動作のために回転運動を直線運動に変換する機構部品がついています。
内部まで埃がすこし入ってきていたので、DCモーターや機構部品についていた埃や汚れをIPA(イソプロピルアルコール)できれいに清掃!

この状態で電源を入れて、各動作時の異音をチェックしてみました。
メインDCモーターの後側上部に、上下首振り用モータがあり、白いクランクパーツの奥に収まっていました。
クランクが回転して上下運動に変換していますが、この機構部品ではとくに異音していませんでした。

左右首振りのモータはメインDCモーターの後部下側にあり、下から覗くと回転運動を左右の往復運動に変換する特殊な機構部品がありました。
左右首振り時にジリジリという擦動音や、右から左に反転するタイミングで盛大な異音がこの機構部品付近からしていました。
いったん完全にバラしてしまおうかと思いましたが、プラスチック製部品でもあり破損リスクがあります。
機構部品の動作を観察すると、目視できる範囲内で機械運動しているとわかりましたので、すべての回転軸や機械動作の擦動部分にセラミック系グリースを塗って様子をみることにしました。
#タミヤ セラグリスHG/窒化ホウ素微粒子配合・プラスチック部品適合

ちなみに潤滑グリースはプラスチックにオイルが浸潤するようなものだと変性してしまう恐れがありますので、とくに注意が必要です。樹脂材用グリースを利用しないと、プラスチック部品が破損して大きな事故が起こる可能性があります。
この修理前後での騒音レベルを騒音計測アプリ「
Sound Level Analyzer Lite」を用いて計測してみました。計測設定は、A補正、FASTです。
最小風量、上下・左右の同時首振りモードでの運転動作をモーターカバーから10cmの距離で計測しました。なお、騒音計測時の暗騒音レベル(室内の無音レベル)は約28dBです。
#修理前の騒音レベル

左右首振りの左反転時に盛大な異音がでていることが時間グラフでも確認できます。
異音の騒音レベルは最大48dBとかなり大きな音ですので、さすがに就寝時には使いたくないです。
#修理後の騒音レベル

修理後には、騒音レベルが3dBくらい下がった感じで、グリースによる潤滑効果がかなりでています。
ただ、左右首振りでの左反転時にいまだに異音がでていますが、かなり小さい音になりました。
#修理1週間後の騒音レベル

修理後の約1週間使用していたら、左右首振りの左反転時での異音が発生しなくなりました。可動部分にセラミックグリースが行き渡って動作がなめらかになったためでしょう。
運転音もとても静かになり、1mも離れるとほぼ無音に近い感じです。新品時よりむしろ静かになった感じがします。
#最大風量時の騒音レベル

ついでに、最大風量時の騒音レベルも計測してみました。
DCインバーターモーターの動作音はほとんど大きくならず、羽の風切り音が主体です。騒音レベルは51dB(羽から横方向10cm)くらいでした。さすがに風量が強すぎますし、騒音レベルも大きいので就寝時には使用できません。
ともかく扇風機の分解修理は無事成功!
簡単な整備作業でこの成果が得られてよかったです。
この夏、就寝時にも静かに扇風機の風を浴びられそうです。もうしばらくして、念の為、再分解して内部チェックをしようと思っています。
備考:
・メーカが公表している扇風機の静音性能については、計測条件も大きく異なり、さらに無響室等の暗騒音レベルが非常に低い部屋で計測した数値と考えられます。通常の室内の暗騒音レベルはせいぜい30dB前後ですので、今回計測した騒音レベルは暗騒音も含んだ計測値となります。
・電気製品の修理は感電や火災等の危険性を伴います。本記事は何ら自己修理を推奨するものではありません。修理にあたっては専門的な技術が必要になりますので、すべて自己責任でお願いします。
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